日経からの記事でBYDから日本向けに軽規格の電気自動車が投入されると報道がありました。
これは元々BYDが日本に参入した際に、日本では軽規格の自動車が多く経営陣から「これだけ人気のあるカテゴリー車種であれば入る余地もある」と開発の話が出ていたと噂されていたのですが、これが本格的に動いたということでしょう。
ただ、3年前の出来事で考えると、とんでもない開発スピードだと思います。
軽規格の参入
海外メーカーが日本の軽規格に参入することは非常に難しいと言われてきました。
これは軽規格は日本だけにあるガラパゴス的なものであり、海外メーカーのグローバル販売を考えると非常に小さなマーケットになり参入しても利益が上げにくいという構造であるためです。
日本車メーカーは逆に軽規格は得意ではあるものの、海外展開は少なく生産ラインは限られた中で対応しています。
(スズキは生産ラインが決まっているので、予約数が多くても生産ラインを増やさないのはこのためですね)
また、車両の大きさから型を1から作成しなければならず、開発費用や材料などの調達費がペイできないことで参入には至らないことが多いですね。
そのため、今回のBYDが軽規格に参入することは極めて異例であり、チャレンジしていると受け止めることができるでしょう。
BYDのメリット
さて、今回BYDは軽規格に参入するわけですが、勝算無くしてこんなチャレンジはしないと思われます。
これは筆者目線ではありますが、BYDが参入を決めたのは以下ではないかと考えています。
・軽規格でのEVはライバルが少ない
・車種ラインナップが少なく、幅広い展開で顧客を取り込める
・軽規格でBYDを知ってもらい、普通車セグメントでも販売を推進する
・2台目需要を狙うことができ、かつ軽規格をフルラインナップすることで買い替え需要にも対応できる
こういった要素から日本はブルーオーシャンと判断したのではないかと考えられます。
特に日本での軽自動車事情として「道路が狭い」「駐車場が小さい」「税金が安い」と3拍子揃っており、ここは非常に魅力的なセグメントでもあります。
ただ、現状は日本の自動車メーカーが熾烈な争いをしているマーケットでもあり、どこまで食い込むことができるかが焦点になるでしょう。
ガソリン車では到底勝てるスジは見えないので、電気自動車という観点からはBYDに有利に働く要素は非常に大きいです。
1番の武器
これはBYDとして1番の武器となるのは、ズバリ「バッテリー価格」でしょう。
電気自動車の大部分はバッテリーで価格が決まってしまいます。しかし、BYDはバッテリーメーカーでもあり安価に用意できるのが強みです。
おそらく、軽自動車にもシーガルなどと同様にLFPバッテリー(リン酸鉄)を搭載してくると考えられます。
LFPバッテリーは充電サイクル回数の耐久値、価格は安く抑えることができ、安全面でも申し分ありません。
ただし、LFPバッテリーは密度が低く、搭載するにはそれなりの面積を必要とします。軽自動車は元々車両サイズが小さいため、エネルギー密度の低いLFPバッテリーでどこまで積載してくるのかが腕の見せ所でしょう。
三元系(ニッケル・マンガン・コバルト)はエネルギー密度が高いですが、LFPバッテリーに比べて高額です。ただ車両が小さい分、三元系の方が搭載容量が大きくできるのが魅力的です。
仮に日産サクラと同様の20kWhを搭載するとしたら、LFPバッテリーの方が耐久値など高いと評価はできますが、そこまで価格の優位性が出ないと考えられます。
LFPバッテリーの強みは搭載できる容量が大きいほど価格面でメリットが出やすいため、できるだけ搭載することで価格を抑えることになります。
筆者の予想ですが、40kWhまで軽自動車規格で搭載してくるのではないかと考えられます。
これは相当なチャレンジですが、他との差別化であればこれぐらいインパクトが必要であり、価格も250万円〜280万円を狙ってくるのではないかと考えられます。
失敗できないチャレンジ
上記の理由から、相当な覚悟でBYDは軽規格のEVへ参入するものと考えられます。
これは軽規格でBYDが日本で席巻できれば、世界での自動車市場でも良い宣伝になりますし、何より日本の自動車メーカーに戦って成果が出せたことは相当インパクトがあるでしょう。
今まで日本車は世界で戦い続けて、勝ち続けてきたわけですが、ここで黄色信号が点滅し始めたと言っても過言ではありません。
仮に世界が電気自動車への移行が進んできて、さぁこれからでは遅いのです。
今の段階で覇権を取らないと生き残れないとBYDは判断しているので、世界の動きに敏感と言えると思います。
これはかつて日本で電化製品が世界一と言われていた構図に似ています。テレビは日本製と言われていましたが、今では有機ELのパネルは韓国製や中国製になっています。
これからでもまだ何とか日本車メーカーでも戦えるので、ぜひ対抗していいものを出して頂きたいですね。